旋盤加工の品質において重要となる「面粗度」について、その理論的な算出方法と簡単な解説、また実際の測定値が理論値から外れてしまう主な要因等を記述します。
面粗度の理論式
旋盤加工において、加工するワークの面粗度は主に「送り量」と使用する刃物の「ノーズR径」によって決まります。理論式は以下の通りです。
Rz=f^2/(8×R)×1000 (Rz:理論面粗度[μm]、f:送り量[mm/rev]、R:ノーズR径[mm])
そもそも旋盤加工における面粗度は、刃物がワークを削る際、表面にできる凸凹の大きさと言い換えることができます。当然、凸凹が小さいほど面粗度が良い(ツルツル)、凸凹が大きいほど面粗度が悪い(ザラザラ)状態となります。
ここで、上述した理論式を読み解いてみましょう。送り量fとは、旋盤加工中にワークが1回転する間に刃物が進む距離のことです。この値が小さいほど、同じ回転数当たりワーク表面を刃物が削る回数が多くなり、凹凸の高さが低くなるため、より平坦な面に近づきます。従って面粗度Rzは小さな値となります。
一方ノーズR径とは、旋盤加工で使用する刃物(バイト)の刃先Rのことを言います。この値が大きいほど、同じ送り量で加工した際のワーク表面の凹凸が小さくなるため、より平坦な面に近づきます。
面粗度を良くしようとすると発生するデメリット
面粗度を良くするためには、「送り量を小さくする」もしくは「ノーズR径の大きい刃物を使用する」ということが有効だとわかりました。しかし、どちらもデメリットがあります。
「送り量を小さくする」と、刃物がワークを擦る回数が増えるため摩耗の進行が早くなります。
「ノーズR径の大きい刃物を使用する」と、ワークを削る際に刃物とワークが接触する面積が増え、切削抵抗が増加します。
切削抵抗の増加は、剛性の低いバイトを使っている場合は”ビビリ”の原因となり悪影響となります。(ビビリについてはここでは詳しく記述しませんが、発生すると面粗度が悪くなってしまいます)
理論式で算出した面粗度と実際の面粗度がズレる理由
理論式で算出した面粗度は、あくまでも理論値であり、実際の加工では一般的に悪くなる傾向にあります。
その主な原因は、加工時の”振動”です。旋盤加工は、ワークを高速回転させ刃物を当てることで切削を実現しています。特に金属等の重量物を高速回転させると、大きな振動が発生します。
ワーク・刃物・機械全体が振動している状態で加工を行うと、当然ワークの表面に振動の”波”が転写される形となります。この波は、面粗度にダイレクトに影響を及ぼすこととなり、結果として理論値よりも悪い値となってしまいます。
その他にも、切削時に発生する切粉がワーク表面に接触し、微細な傷をつけてしまい面粗度を悪くすることもあります。